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先生すみません。いつも読ませていただいてるのに、なんだかいつもかわいがってもらってるのに逆らう、ユダのような気分で書きます。
本当は今日は、小児科医と麻酔科医と産婦人科医のそれぞれ大変なところの比較をしようと思ってたんですが、たまたまfreeanesthe先生のblogをみてしまって、そろそろこの違和感を書いたほうがいいんじゃないかと思って、書きます。
おかしいとか、納得いかないと思った方々はそれもひとつの考えかたと優しい目で見てください。
麻酔科医が開業するということ自体に、違和感があるんです。
僕自身は、いわゆる危機管理だとか難しいことは考えなくても、とにかく周術期の患者のQOLを上昇させることが、我々麻酔科医にとってもっとも大事なことなんではないだろうかと思っています。最近いろんな文献で、麻酔方法が術後のQOLどころか生存率にまで影響を及ぼすと報告されています。それはそれでいいことなんですが、申し訳ないですが、眉唾です。たかだか術中の麻酔方法をいろいろ変えて有意差がでるほど、われわれの影響力ってありますか?
たとえば、1000例ずつ違う麻酔法でして、術後経過がいいのがそれぞれ600例と700例でした。chi square testで有意差がでました。だから麻酔法を考えることは重要です。
結論には賛同できても、途中経過に賛同できません。その10%に意味はありますか?麻酔科医ならば当然考えなければならないことであっても、外科医に理解してもらえますか?理解してもらえないから考えないのではなく、どんな麻酔科医でも考えるべきことであって、その程度のことを考えていない麻酔科医がおかしいのであって、決して麻酔科医以外には理解できない違いのような気がします。
じゃ、麻酔科医は何を考えて麻酔するべきなのか?
もっと目の前のことのように思うんです。
たとえば、
腹腔鏡下手術で術後痛がってる → EPI or PCA → 病棟の受け入れ? → 必要性の説明、勉強会、術後のフォロー → 病棟からのフィードバック、術後診察 → 評価
PONV → 制吐剤 → 術後覚醒遅延 → 麻酔時間延長 → 種々の不利益
そういったことにいわゆる出張麻酔科医は対応できますか?
そりゃ麻酔科医として外科医のみならず病棟からも信頼されている出張麻酔科医ならばできるでしょうが、そんな病院ばかりじゃないはず。「麻酔だけしてもらったらいいよ。あとのことはやっとくから」っていいように言う外科医。かかわりを拒否する病棟。いろんな病院があるはずなのに、出張麻酔科医のいい部分ばかり(収入?)が脚光をあびているように思います。
麻酔科医である以上、いわゆる手術場の運営等には係わりを持つべきであって、さらに患者の周術期満足度をあげるようにするべきであって、つまり短期的にも長期的にも患者管理、病院運営にかかわっていくべきだと思っています。
申し訳ないですが、本当の意味で出張麻酔科医にはそれはできません。自負かもしれません。
反論はあろうかと思います。でも出張麻酔科医が満足感を感じていない部分、自分が参加しない部分で決められた枠のなかでしか仕事できない悲しさ、それは、ある程度考えなければならないことだと思います。
今後我々麻酔科医の道を選ぶ後輩たちにも教えておいたほうがいいことではないですか?
だいたいね、麻酔科医が開業できない。これは当然だと思ってるんですよ。たとえば外科医が開業して、胃のトタールも、PDも、Milesもできますか?たいてい、8割ヘモでたまに消化管の手術、1年に1回食道ぐらいですか。今後どんどん情報開示がすすめば、そういう病院を患者が選びますか?
さらに、厚生労働省の方針通り、手術をする病院の集約化が進むと、出張先がなくなると思いますし、今言われているほど、麻酔科医が足りないってこともない時代がきますよ。そうなると、開業麻酔科医どころか、勤務麻酔科医でさえ職場がなくなるかもしれない。
いつまでたっても足りない麻酔科医、優遇しても増えない麻酔科医、厚生労働省は、麻酔科医という存在にいつ見切りをつけるでしょうか? 今回の麻酔看護師制度、あんなにとんでもない話を公衆の場で堂々と言う人がいること自体が、麻酔科優遇の時代は終わったと感じさせるに十分だと思います。
もういい加減、我々麻酔科医の “自己改革” が必要です。
話が少しそれました。
申し訳ありません。あと5年、10年ならまだしも、その先の開業麻酔科医の生きていく道は、大変厳しいものであろうと、自分勝手に考えています。
以上、いつもいつも、まとまりのない話で、ごめんなさい。